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2025.5.20

「体育会系は古い?」—現代アスリートが組織にもたらす静かなリーダーシップ

競技に打ち込む日々から、ビジネスの世界へ。
アスリートのキャリア形成に悩む方々にとって、「体育会系=強引な指導、上下関係の厳しさ」というイメージが足かせになっていませんか?
しかし、現代のビジネス環境では、アスリートが培ってきた資質が新たな形で評価されています。特にZ世代のアスリートたちが示す「静かなリーダーシップ」は、多様性を重視する現代組織に新しい風を吹き込んでいるのです。なぜなら、彼らは従来の体育会系イメージとは異なる価値観を持ち、チームの中で独自の存在感を発揮するからです。
この記事では、変わりゆくアスリートの組織での役割と、そのキャリア形成の可能性について考えていきます。

アスリートキャリアの新たな可能性と組織における価値

スポーツの世界と企業組織。
一見まったく違う世界のように思えますが、実はアスリートが持つ強みは、現代のビジネス環境で大きな価値を生み出しています。ここでは、従来の「体育会系」のイメージを超えた、現代アスリートの新しい組織での役割について詳しく掘り下げていきます。特に注目したいのは「静かなリーダーシップ」という概念。これを理解することで、アスリートの方々は自身のキャリア形成に新たな視点を得られるでしょうし、企業の採用担当者は、アスリート採用がもたらす独自の価値を再発見できるはずです。
スポーツで培った経験を、どう社会で活かせるか—その答えを一緒に探っていきましょう。

古い体育会系イメージの崩壊

「体育会系」という言葉から連想されるのは、厳しい上下関係や、根性論に基づく指導方法ではないでしょうか。かつてはそのような環境で育った人材が、ビジネスの世界でも「我慢強さ」や「組織への忠誠心」を評価されてきました。この固定観念は長く続いてきたため、引退を控えたアスリートの中には「自分のキャリアはスポーツ以外では通用しないのでは」と不安を抱える方も少なくありません。
しかし、時代は確実に変わりつつあるのです。多くの企業が多様性を重視し、違った視点や柔軟な発想を持つ人材を積極的に求めるようになっています。特に若い世代のアスリートたちは、単に指示に従うだけでなく、自分の考えを持ち、チームの中で建設的な議論ができる力を養っています。
2023年にスポーツキャリア研究機構が実施した調査によると、アスリート採用を行った企業の72%が「従来の体育会系イメージとは異なる、柔軟な発想力」を採用理由に挙げています。これは、競技を通じて培われた「目標設定能力」や「自己管理力」といった強みに、現代的な価値観が加わった結果といえるでしょう。

Z世代アスリートが示す新しいリーダーシップ

Z世代(1995年代後半~2010年代前半生まれ)のアスリートたちは、デジタルネイティブとして育ち、多様な価値観に触れる機会を持っています。彼らが示すリーダーシップは、声高に指示を出すタイプではなく、「静かなリーダーシップ」と呼ばれることが増えてきました。
この「静かなリーダーシップ」の特徴は、まず「傾聴力」にあります。チームメイトの意見をしっかり聞き、多様な視点を尊重する姿勢です。また、「共感力」を持ち、相手の立場に立って物事を考えられるため、チーム内の調和を保つことができるのが強みです。
さらに、失敗を恐れない「挑戦精神」と、それを支える「回復力」も持ち合わせています。一度の挫折で諦めるのではなく、そこから学び、次に活かす力は、変化の激しい現代ビジネスにおいて非常に価値のある資質だと言えるでしょう。
2023年のスポーツ心理学ジャーナルに掲載された研究によると、「アスリートとしての経験が、むしろ多様性を受け入れる柔軟さにつながっている」ことが示されています。厳しい練習や試合を乗り越えてきた経験が、困難な状況でも粘り強く取り組む姿勢や、多様な考え方を受け入れる寛容さを育んでいるのです。
「静かなリーダーシップ」の主な特徴は以下の通りです:

  • 傾聴力: 多様な意見に耳を傾け、チーム全体の視点を取り入れる
  • 共感力: 異なる立場や考え方を理解し、受け入れる姿勢
  • 挑戦精神: 未知の領域に踏み出す勇気と、失敗を恐れない姿勢
  • 回復力: 挫折から学び、立ち直る精神的強さ
  • 自己認識: 自分の強みと弱みを理解し、継続的に成長する姿勢

企業が求めるアスリートの特性と採用メリット

アスリート採用に積極的な企業が増えている背景には、彼らが持つ特有の強みが現代のビジネス環境と親和性が高いことがあります。アスリートが持つどんな特性が評価されているのでしょうか。

アスリートの特性 ビジネスでの価値 共感する能力・スキル
目標達成への執着心 困難なプロジェクトの完遂力 計画立案力、プロセス管理能力
プレッシャー下での判断力 緊急時の意思決定、危機管理能力 ストレス耐性、冷静さ
チームワーク精神 部門横断的なプロジェクト推進力 コミュニケーション能力、協調性
自己管理能力 自律的な業務遂行、時間管理 セルフマネジメント・健康管理
挫折からの学習能力 イノベーション創出、改善マインド レジリエンス、適応力

ビジネス環境が急速に変化する現代において、「変化への適応力」や「多様なバックグラウンドを持つ人々との協働能力」は非常に重要です。
アスリートは常に変わる状況(対戦相手、天候、体調など)に適応しながら結果を出すことに慣れています。この能力は、VUCAと呼ばれる変動性、不確実性、複雑性、曖昧性が高まる現代のビジネス環境で大きな武器となるのです。
興味深いのは、「体育会系=命令に従順」というイメージとは逆に、多くのアスリートが持つ「建設的に異議を唱える力」です。トップアスリートほど、常に最善の方法を模索し、時には指導者と建設的に議論する経験を持っています。この「良い意味での反骨精神」こそ、イノベーションを求める企業が求める資質なのです。

これからのアスリートキャリア形成に必要なこと

現代のビジネス環境で活躍するために、アスリートに求められることは何でしょうか。それは、自分の強みを理解し、それをビジネスの文脈で表現する力です。
競技で培った「目標達成のためのプロセス管理能力」や「プレッシャー下での意思決定力」は、言語化することで大きな武器になります。日本スポーツキャリア支援協会などの団体では、アスリートの強みを企業ニーズとマッチングさせるキャリア支援プログラムを提供しています。こうしたプログラムを活用することで、自身の強みを再発見できる可能性があります。キャリアカウンセリングを通じて、自分の強みを再発見できた選手は数多くいます。
また、デジタルスキルの習得も不可欠です。データ分析やSNSでの情報発信など、現代社会に欠かせないスキルを身につけることで、活躍の場はさらに広がることでしょう。引退を控えたアスリートの方は、今からでも基本的なデジタルリテラシーを身につける行動を始めてみましょう。オンライン学習プラットフォームには、初心者向けの充実したコースが数多く用意されています。
さらに、メンターとの関係構築も重要です。すでにビジネスの世界で活躍する元アスリートとの繋がりは、キャリア形成において大きな助けとなります。スポーツコミュニティが主催するネットワーキングイベントに参加すれば、同じ悩みを乗り越えてきた先輩たちとの出会いがあるかもしれません。

アスリート採用を検討する企業へのアドバイス

アスリート採用に興味はあるものの、「どう評価していいかわからない」「スポーツの実績と業務能力の関連性がわからない」と悩む企業も少なくありません。そんな企業の人事担当者に向けて、効果的なアスリート採用のポイントをご紹介します。
まず重要なのは、競技実績だけでなく「競技を通じて何を学び、どう成長したか」を評価する視点です。勝敗や記録以上に、目標達成のためのプロセスや、チームでの役割、挫折からの立ち直り方などに注目することで、ビジネスでの適性が見えてきます。
また、アスリートの「静かなリーダーシップ」を引き出すための環境づくりも大切です。最初から過度な期待をかけるのではなく、段階的に責任ある役割を任せていくことで、彼らの潜在能力を最大限に引き出せるでしょう。
アスリート採用で成果を上げている一部の企業では、元アスリートの社員がメンターとなる「バディ制度」を導入しています。スポーツからビジネスへの移行期をサポートする仕組みを整えることで、早期離職を防ぎ、高いパフォーマンスを引き出すことができるのです。

アスリートの「セカンドキャリア」から「デュアルキャリア」への転換

近年、「セカンドキャリア」という考え方から「デュアルキャリア」という新しい概念への移行が進んでいます。「セカンドキャリア」が競技引退後の人生設計を指すのに対し、「デュアルキャリア」は現役時代から競技と並行して将来のキャリアに向けた準備を進める考え方です。
欧米の多くの国では導入が進んでいるこの「デュアルキャリア」の考え方が、日本でも少しずつ浸透しつつあります。現役時代から社会との接点を持つことで、引退後の急激な環境変化によるストレスを軽減し、スムーズなキャリア移行が可能になるのがメリットです。

具体的には、オフシーズンでのインターンシップ参加や、オンライン学習での資格取得、SNSでの情報発信力の強化など、競技と両立できる範囲でのキャリア準備が効果的だと言われています。日本オリンピック委員会や日本スポーツ協会などの団体では、現役アスリート向けの「デュアルキャリア構築プログラム」を提供しており、これらを活用することで競技パフォーマンスを維持しながら将来に向けた準備を進める機会があります。

「引退してから考える」ではなく「現役のうちから準備する」という意識を持つことで、競技人生の終わりではなく、新たなステージへの移行としてキャリアを捉えられるようになるのです。この「終わり」ではなく「移行」という心理的フレームの転換は、アスリートの精神的健康にも良い影響をもたらします。
体育会系の古いイメージを超えて、新しい形で組織に貢献するアスリートたち。彼らの「静かなリーダーシップ」は、多様性と変化を重視する現代社会において、これからますます重要な役割を果たしていくことでしょう。

 

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