- 2025.5.13
コラム:未来への基礎を築く!教育現場と体操が手を取り合う、子どもの基礎運動能力育成
「先生、見て!こんなに高く跳べるようになったよ!」
子どもたちのキラキラした笑顔と、自信に満ちた言葉は、私たち教育に携わる人間にとって、何よりの喜びです。
しかし、近年、子どもたちの運動を取り巻く環境は変化し、基礎運動能力の低下が懸念されています。
文部科学省の調査でも、子どもの体力・運動能力は長期的に見て低下傾向にあるという結果が出ています(出典:文部科学省「令和元年度体力・運動能力調査結果の概要」)。
この現状に対し、私たち教育現場の人間は、どのように向き合うべきでしょうか?その鍵の一つが、「体操」が持つ、子どもたちの基礎運動能力を育む力にあると私は考えます。
なぜ、今、基礎運動能力なのか?
科学が語るその重要性
そもそも「基礎運動能力」とは、走る、跳ぶ、投げる、起きる、立つ、座る、回る、バランスを取るなど、あらゆる運動の土台となる基本的な動作能力のことです。これらの能力は、単に体を動かすだけでなく、脳の発達とも深く関わっています。
神経系の発達が著しい幼児期から学童期にかけて、多様な動きを経験することは、運動神経を円滑にし、その後の学習意欲や集中力、さらには社会性の発達にも良い影響を与えることが、多くの研究で示唆されています。
(出典:Diamond, A. (2016). Evidence-based principles for improving executive functions that contribute to school readiness and academic achievement. Zero to Three, 36(6), 11-19. [実行機能と運動能力の関連性を示唆しています])。
体操が秘める力:科学的根拠が示す可能性
では、体操はどのように子どもの基礎運動能力を育むのでしょうか?
例えば、マット運動における多様な体勢の保持や移動は、体幹の安定性や空間認識能力を養います。跳び箱の跳躍や着地の動作は、脚力やコーディネーション能力を高めます。鉄棒の保持や回転は、支持力やバランス感覚を鍛えます。ボールを使った運動は、投げる、捕るという操作性だけでなく、目と手の連動性を養う上で非常に有効です。
これらの運動は、単に体を動かすだけでなく、脳に多様な刺激を与え、神経系の発達を促します。コーディネーショントレーニングという言葉を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、これはまさに、神経系の発達が著しい時期に、多様な動きを通して運動能力を高めるためのトレーニング法なのです。体操教室では、専門的な知識を持った指導者が、このような科学的根拠に基づいた効果的なプログラムを提供しています。
教育現場でできること:体操的アプローチの実践的応用
もちろん、教育現場においても、体操的なアプローチを取り入れることは可能です。
例えば、保育の時間や体育の授業で、多様な動きを取り入れたサーキット遊びや、リズム感やバランス感覚を養うリズム運動、ボールや縄跳びを使った簡単な運動遊びなどを計画し、実施することができます。大切なのは、子どもたちが楽しみながら、多様な動きを経験できるように工夫することです。
安全に配慮することも忘れてはなりません。準備運動や整理運動を丁寧に行い、活動場所や器具の安全点検を徹底することは基本です。また、発達に課題のある子どもに対しては、個別なニーズに合わせた運動プログラムを考えることも重要です。時には、異年齢の子どもたちが一緒に活動することで、社会的相互作用を促す効果も期待できます。
より専門的な学びの場へ:体操教室との連携という選択肢
私たち教育現場の人間にとって、全てにおいて専門家であることは難しいかもしれません。そんな時、心強い味方となるのが、地域の体操教室です。
体操教室には、専門的な知識と指導力を持った指導者、そして安全に配慮された設備とプログラムがあります。教育現場と体操教室が連携することで、子どもたちはより専門的な指導を受ける機会を得られ、基礎運動能力をさらに発達させることができるでしょう。
連携の方法は様々です。体操教室の指導者を学校や保育園に招いて運動指導の相談を受けたり、合同で運動イベントを実施したり、情報交換を行ったりすることも考えられます。体操教室を選ぶ際には、指導者の資格や指導方針、安全対策などを注意深く確認することが大切です。
未来への投資:教育と体操の温かい連携
子どもたちの未来を拓くために、基礎運動能力は欠かすことのできない基礎となります。教育現場と体操が手を取り合い、それぞれの専門性を活かしながら連携していくことこそ、子どもたちの可能性を最大限に引き出す効果的な方法だと私は信じています。
私たち教育に携わる人間は、常に学び続け、新たな視点を取り入れながら、子どもたちの成長をサポートしていく使命があります。体操との連携を視野に入れ、子どもたちの未来のために、新たな一歩を踏み出してみませんか?
出典一覧
* 文部科学省. (令和元年). 令和元年度体力・運動能力調査結果の概要. https://www.google.com/search?q=https://www.mext.go.jp/sports/content/000089848_1.pdf
* Diamond, A. (2016). Evidence-based principles for improving executive functions that contribute to school readiness and academic achievement. Zero to Three, 36(6), 11-19.
* 厚生労働省 e-ヘルスネット. (n.d.). コーディネーション運動. https://www.google.com/search?q=https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/yk-027.html
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