- 2025.6.13
「“初代なでしこ”の血を継ぐ副キャプテン 平井成美——夢を追い続けるフットサリスタの物語」
立川アスレティックFCレディース副キャプテンとして、2025年に新たな一歩を踏み出した彼女。
母譲りのサッカーDNA、迷いながらも選んだ道、そして叶えた日本代表。フットサルと真摯に向き合ってきたその軌跡に迫る。
「サッカーは私のルーツ」——“初代なでしこ”を母に持つ少女の原点
サッカーボールに触れたのは、わずか2歳のときだった。理由はシンプルだ。
「母と叔母がやっていたから」。しかし、その“母”はただのサッカー好きではない。
実は、3姉妹そろって“初代なでしこJAPAN”という、輝かしい経歴を持っていた。
そんな環境の中で、彼女が自然とサッカーを始めたのは必然だったのかもしれない。
中学・高校と本格的に競技に打ち込み、元日本代表・吉田弘氏、半田悦子氏のもとで腕を磨いた。
(半田悦子氏は、母と同じチームで日本代表でも一緒でした。)
ポジションは攻撃的な役割が多く、そのセンスとスピード感あるプレーは当時から光っていた。
「1回の体験が、人生を変えた」——就職からフットサルへの転向
高校卒業後、彼女が選んだ道は“サッカー選手”ではなく“歯科助手”だった。
「競技をやめようとは思ってなかったけれど、何か手に職をつけたいという気持ちがあったんです」。
そんなある日、転機が訪れる。高校時代の先輩に誘われ、フットサルの練習に参加。たった1回の体験だったが、彼女の心を大きく揺さぶった。
「これ、もっとやりたい」。そう思った瞬間、彼女は仕事を辞め、本格的にフットサルの道に進む決断をした。
「一度は就職、それでも夢をあきらめない」——二足のわらじとプロ入り
2014年、静岡を拠点とする「ゴリラシズオカ」に加入。フットサル選手としてのキャリアをスタートさせる。
しかし、さらなる高みを目指す彼女には、明確な目標があった。それが「バルドラール浦安ラス・ボニータス」への入団だった。
ただ、競技一本では生活が成り立たない。彼女は再び手に職をと考え、2015年に歯科衛生士の学校に入学。
昼は学校、夜は練習。寝る間を惜しんで努力を続け、無事に国家資格を取得。文字通り「夢と現実」を両立させながら、
ステップアップのチャンスをうかがっていた。
「夢の舞台で開花」——日本代表への切符をつかむ
そして2019年、ついに夢が現実になる。目標だったバルドラール浦安の練習に参加。監督からその場で合格を告げられ、晴れて入団を果たした。
関東女子フットサルリーグでは、入団初年度でチームの優勝に貢献。自身も8得点を挙げ、得点王に輝いた。
勢いそのままに、わずか半年で日本代表に選出。彼女にとって、この瞬間はすべての苦労が報われた証だった。
そして、忘れられない試合がある。浦安で最後に出場した選手権、その山場の一戦が母の誕生日だったのだ。
「勝利をプレゼントしたい」。その強い思いを胸に戦い抜き、勝利を掴んだ。母への最高の贈り物となった。
「もう一度、フットサルと向き合いたかった」——立川への移籍、そして新たな挑戦
2025年、彼女は新たな舞台を選んだ。浦安からの移籍を決意し、立川アスレティックFCレディースに加入。
副キャプテンという役割も任されている。
「浦安では、プレーの機会も減り、自分の得意とするポジションで出られなくなっていました。
そんなとき、立川からオファーをいただいて。もう一度、フットサルに真剣に向き合える場所を探していたんです」。
移籍は決して後ろ向きなものではなかった。むしろ、彼女にとっては新たな飛躍のチャンス。
副キャプテンとしての責任を背負いながら、ピッチに立つ日々が続いている。
「フットサルを、もっと身近なものに」——Naru Labの挑戦
実は彼女にはもうひとつの顔がある。2022年に立ち上げた「Naru Lab(ナルラボ)」では、大人向けのフットサルスクールを月2回開催。
競技者だけでなく、誰もが楽しめるフットサルの場を提供している。
「フットサルって、見ていて楽しいし、やっていてもすごく奥が深い。競技としてだけじゃなく、もっと身近なものにしていきたいんです」。
競技者として、指導者として、そして一人の人間として。フットサルへの愛情を全身で表現し続ける彼女の挑戦は、まだ始まったばかりだ。
編集後記
「どんな環境でも、自分で道を選んで進んでいくことが大切」。
インタビューの最後、彼女が口にしたその言葉には、これまでの歩みと、これからの未来が詰まっていた。
どこまでもまっすぐに、フットサルを愛し、支え、広げていく——その姿に、多くの人がきっと勇気をもらうはずだ。
YouTube番組「アスリートキャリア」出演中
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平井成美プロフィール
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